荻須高徳の風景画です。
1936年、36才のときに描かれた作品で、すでにパリの 画壇 での地位を確立したと言える頃の 風景画 です。重厚な石造りの建物や、カーブを描いた道を、輪郭を強調するような力強いタッチで描く構図は、荻須高徳ならではの 作風 です。彼は、1927年に初めてパリの地を踏んで以来、憧れの街の風景に接した感動をキャンパスに描き続けました。同じくパリを描いた先輩の佐伯祐三とともに街角に立ち、写生旅行に出かけ、試行錯誤を繰り返し、自らの画境を築き上げていきました。自らの力で海外で画家としての生活を切り開いていくため、渡仏後2、3年は、フランス語の習得にも熱心に取り組んだといいます。
彼は、観光客が訪れるようなおしゃれなカフェやお店ではなく、近所の人達が普段の生活で利用するような、どこにでもある商店や施設を題材としました。このように街の息遣いや、何気ない日常を切り取り、旅人としてではなくパリで生活する者として街を見つめた眼差しが表れています。のちに、パリの人々から「日本生まれのパリ人」までに称された、彼ならではの眼差しです。このような、荻須高徳らしさが冴える 上手 の作品は高く評価させて頂きますので、是非ご相談ください。どの作家にも言えることですが、作家は自分の描こうとする対象物に情熱を注ぎ、試行錯誤を繰り返し、何年もかかって独自の 画境 に到達します。晩年 の、自身の 画風 を確立させた 全盛期 の作品には、熟練した深い味わいがあります。
ご相談で、よく作家名での価格のお問合せがありますが、作家の名前だけでは買取価格の決定は出来ません。同じ作家の作品でも、制作年代や題材、出来栄えにより、10倍、20倍と買取価格が違う場合がありますので、一度ご相談頂ければと思います。46.0×55.2cm、キャンバス に描かれた油絵です。(No.460)