挿絵本

挿絵本( さしえぼん )

日本では、江戸時代の劇場番付挿絵本と通称されていたが、一般には通俗的な、おもに婦女子向きの読物の挿絵本を絵本と呼んだ。歴史的には、平安時代末から室町時代末におよぶ多くの絵巻物は、絵が物語を表現する形式としては世界に比類ないが、その推移を見ると、内容が細分化するに従って絵は衰弱し、巻子本はついに冊子本に変わる。

20世紀初期にヨーロッパで人気を博した。
ピカソら美術家による挿絵の入った豪華本は希少価値の高い美術品とみなされた。藤田嗣治も積極的に取り組み、生涯で50冊以上の挿絵本を手掛けた。
ルネサンス期以降の西洋諸国では、豊かな財力と教養を持つ人物が、自邸のサロンや書斎を洗練された知的空間として演出するため、美しい革の装幀を施した貴重書を書棚に架し、絵画や彫刻とともに壁を飾る慣習が浸透していた。芸術家による挿絵本は、20世紀初頭のパリで生まれ隆盛した。この背景には、パリが豊かな愛書文化を土壌にもつ街であり、書物を愛好する愛書家や稀少な本のコレクターが存在したことがある。
「芸術家による挿絵本」(リーヴル・ダルティスト)は、フランスで19世紀末から20世紀中盤にかけて隆盛した版画の出版物。
美術作品の普及を目ざした画商や出版者の依頼により、画家たちは古典文学や同時代の詩人の作品などから原作を選び、あるいは自らテキストを書き、版画技法による挿絵を制作した。
「芸術家による挿絵本」は、古くから存在する挿絵専門の職人や挿絵作家の手による挿絵入りの書物とは異なる。画家や彫刻家が下絵を制作し、その下絵をもとにした版画の制作過程は、腕利きの職人に任せられるか、もしくは版画技法を習得した芸術家自身が関わる場合もある。数十部から約四百部程度の限定部数のもと、時には画家による自筆のサインが記され、紙、インク、活字、挿絵、ページレイアウト、表紙デザイン、版画技法にこだわった稀少な豪華本である。芸術家による挿絵本は、世界各国の美術愛好家や愛書家たちのコレクションに入り愛蔵された。