前田青邨 略歴

紅白梅

岐阜県中津川市の生まれで、本名は廉造。
妻は荻江節の5代目荻江露友。
小学校の頃から画才を示して、早くより画道への志をたて、14歳の時 画家 を志して上京。
病のため一旦帰省し、16才で再上京し、尾崎紅葉のすすめで梶田半古塾に 入門 した。
梶田半古は、当時大和絵に造詣深い大家であり、また新聞小説に新味ある 挿絵 を描いて、時代の寵児でもあった。
その頃、先輩に小林古径がいて、二人は小堀靹音門下の安田靱彦、松本楓湖門の今村紫紅らによる紅児会へ明治40年頃参加する。
大正3年には日本美術院の再興に参加し、大和絵の 伝統を 軸に、歴史画から肖像画、花鳥画と幅広い作域を示し、豊麗な画境を築いた。
歴史画を得意とし、大和絵 の 伝統 を深く学び、大和絵の 伝統 を軸に肖像画や 花鳥画 にも幅広く作域を示した。
その中でも、武者絵における鎧兜の精密な描写は、ことに有名である。
大正に入ってからは旅行による取材の、写生にもとづく 風景画 の作品が多く、「朝鮮之巻」「京名所八題」「燕山の巻」「イタリー所見」等が制作された。
大正期にはこのほか、大正11年古径とともに 日本美術院 留学生として渡欧し、大英博物館で顧愷之筆と伝えられる「女史箴図巻」の模写など行い、大いに画嚢をこやす。
日本美術の優秀性を再確認するという日本 画家 としての根本的問題の解決を得るなど、この研修旅行が 画家 としての転機をもたらした。
昭和になってからは、5年に前年の 院展 出品作「洞窟の頼朝」で第１回朝日賞を受賞し、昭和10年には 帝国美術院 会員となり、戦後昭和30年には 文化勲章 を受領し、世に大きく認められた。
作品の上では、大正の写生による 風景画 に対し、昭和期には鋭い写生と、新しい 大和絵 風の 技法 による独特の肖像画の制作が声価を高め、画壇・院展 を代表する画家として長年活躍した。
晩年には、安田靫彦と共に法隆寺金堂壁画の再現模写や、高松塚 古墳 壁画の模写等、文化財 保護事業に携わり、その遺志は、弟子 の平山郁夫等にも引き継がれた。
また、岐阜県中津川市に青邨から寄贈された本画や下図などを展示する青邨記念館がある。
また晩年には東京芸術大学 教授 として後進の育成にあたり、文化財行政面でも、文化財 保護委員会専門審議会委員、法隆寺金堂壁画再現 模写 事業総監督、高松塚 古墳 壁画模写総監督など委嘱され、尽力した。
また若い頃から美術雑誌その他に直截な文章を載せているが、これらを集成した随筆集「作画三昧」（昭和53年新潮社）があり、日本経済新聞紙上連載の「私の履歴書」（昭和44年日本経済新聞社）も、同社から刊行されている。
そのほかの著書に、スケッチ による「日本の兜」（昭和32年中央公論美術出版）がある。
2010年（平成22年）には青邨の代表作の1つである「洞窟の頼朝」が 重要文化財 に指定された。
昭和25年（1950）東京芸術大学教授就任し、昭和30年（1955）文化勲章 受章。
昭和52年（1977）逝去、享年92。

前田青邨の主な出来事や作品の年表

明治18年（1885）岐阜県恵那郡中津川村で食料品屋を営む父、常吉と母、たかの次男として出生。本名は前田廉造。
明治31年（1898）上京し、京華中学校に入学。しかし体をこわしてしまい中途退学し、帰郷。
明治34年（1901）再び上京し、尾崎紅葉の勧めで梶田半古に 入門 した。
明治35年（1902）師半古より「青邨」の 雅号 をもらい、前田青邨となる。
明治40年（1907）紅児会に参加し、今村紫紅、小林古径、安田靫彦らの俊英と共に研究を続ける。
明治44年（1911）下村観山の媒酌で、荻江節の家元、初代荻江露章こと佐橋章子の妹すゑ（荻江露友）と結婚。
明治45年（1912）健康を害してしまい神奈川県平塚に転地療養する。
大正 3年 （1914）日本美術院 の同人となる。「竹取物語絵巻」再興1回 院展 出展
大正 7年 （1918）日本美術院 評議員 に推挙される
大正11年（1922）日本美術院留学生として約1年間渡米し、アッシジで観たジョット・ディ・ボンドーネの壁画などイタリア中世の絵画に感銘を受ける。
大正12年（1923）大英博物館にて中国・東晋の名画「女史箴図巻」を模写し帰国。この 模写 は、東北大学附属図書館が所蔵。
昭和 5年 （1930）「洞窟の頼朝」で第1回朝日 文化賞 を受賞
昭和10年（1935） 帝国美術院 会員となる。御即位記念献上画「唐獅子」を制作
昭和12年（1937） 帝国芸術院会員に推挙される
昭和19年（1944）7月1日 帝室技芸員 に推挙される。「おぼこ」 紙本 水墨画・額 東京国立近代美術館所蔵
昭和25年（1950）東京芸術大学 教授 就任。
昭和26年（1951） 東京芸術大学 日本画 科主任教授に就任。翌年より平山郁夫が青邨の助手となり、爾来指導を受けることとなる
昭和30年（1955） 文化勲章 受章。文化功労者。「出を待つ」 二曲一隻屏風絵
昭和33年（1958） 日本美術院常務 理事
昭和37年（1962） 東京芸大 名誉教授「石棺」 紙本 着色・額 再興47回 院展 出展
昭和42年（1967） 法隆寺金堂壁画再現事業総監修に安田靫彦と共に就任
昭和48年（1973） 高松塚古墳壁画模写事業総監修者。「土牛君の像」再興58回院展出展
昭和49年（1974） ローマ法王庁からの依頼によりバチカン美術館に納める「細川ガラシア夫人像」を完成
昭和52年（1977）逝去。贈従三位

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