高村光太郎 略歴

明治16年3月13日、仏師で木彫刻家・高村光雲の長男として東京に生れた。
作家名は「たかむらこうたろう」と読むが、本名は「たかむらみつたろう」と読む。
父親の影響とロダンの「考える人」の写真を見て衝撃を受け、彫刻家 を志すようになる。
明治30年東京美術学校予科に入学、明治35年本科彫刻科を卒業し、しばらく白馬会の研究科に在籍し、研究所へ通い、彫刻に必要なデッサンを学んだ。
この間、与謝野鉄幹の新詩社に入り、「明星」に短歌を発表しはじめた。
明治39年、ロダンに傾倒し、岩村透のすすめでに渡米、ニューヨーク、ロンドン、パリへ美術の勉強のために留学した。
フランスのパリではシャルル・ボードレール、ポール・ヴェルレーヌ、ポール・セザンヌ、フィンセント・ファン・ゴッホに感銘を受け、過去に写真を見て衝撃を受けたオーギュスト・ロダンとは親交を深め、彫刻家としての精神を学ぶ。
このように留学中に、欧米の近代美術から多くを学び、なかでも近代彫刻の先駆者ロダンに啓発され、生命感あふれる作品を制作するようになり、西洋近代彫刻の形と、東洋的な精神性とをあわせ持つような作品を作る。
明治42年帰国、荻原守衛と共に、日本に初めて近代彫刻を導入した。
帰国してからは、彫刻、絵画、詩の制作を勢力的に行い洋画作品を出品した。
一方で、詩は文芸雑誌「スバル」に投稿し、西洋美術紹介や評論などを掲載した。
油絵にも筆をとり、雑誌「スバル」誌上にマチスの画論を紹介し、又当時としては画期的なエッセイ「緑の太陽」を発表するなど、文筆によっても積極的に近代造型運動の先鞭をつけた。
大正元年には、我国最初の印象派、フォーヴの集団「フュウザン会」を岸田劉生らと興し、また北原白秋、木下杢太郎等と交友し、「パンの会」の会員でもあった。
大正3年詩集「道程」を出版、長沼千恵子と結婚した。
この頃から詩作や翻訳出版は多くなるが、彼の造型にたいするきびしさは次第にまし、彫刻制作に専念するようになり、ブロンズ、木彫作品に秀作を残した。
昭和13年夫人智恵子を失い、翌年昭和14年詩集「智恵子抄」を出版、自らもまた胸を患った。
「道程」「智恵子抄」などの詩集は、教科書にも多くの作品が掲載されており、近現代を代表する詩人として評価が高い。
特に「智恵子抄」は妻であった女流 洋画家・長沼智恵子がこの世を去ってからも、30年に及んで2人の愛を綴った詩集として注目を浴びた。
第二次大戦中 アトリエ の罹災を機に、岩手県花巻市に疎開、農耕自炊の生活に入った。
日本の彫刻界でその名が知られるようになっていた高村光太郎は、太平洋戦争中に戦意高揚を目的とした「大いなる日に」など戦争賛美の詩を発表していたことを恥じた。
いくら時代のせいだったからと言っても、戦争遂行に協力した事を、弁明する事なく疎開先でもあった岩手県の山間に身を引いた生活を送る。
三畳ほどの小さな土間と自分で切り開いた畑しかない場所で、懺悔の謹慎生活を送った。
そのため、帝国 芸術院会員や日本芸術院第二部会員に推挙されるものの、いずれも辞退しており、あまり 展覧会 などに出品する事はなかった。
昭和27年青森県の委嘱による十和田国立公園功労者顕彰記念碑の彫像を決意して上京、故中西利雄のアトリエに起居し裸婦像の制作にかかり、十和田湖畔に裸婦立像「みちのく」を完成させた。
昭和28年10月完成したが、著しく健康を害し、この像が最後の制作となった。
なお詩集「道程」は第1回芸術院賞をうけ、昭和22年及び28年と再度にわたつて芸術院会員（第二部、詩の部門として）に推されたが、固辞した。
昭和31年（1956）4月2日肺結核のため、中野区の故中西利雄のアトリエで死去、享年73歳。
彫刻家、洋画家、工芸家で、詩人と多くの分野で活躍を見せ多才であった事で知られており、彫刻では父・高村光雲譲りの高い技術力を見せている。

高村光太郎の主な出来事や作品の年表

明治16年（1883）木彫家高村光雲の長男として東京下谷西町に生まれる。
本名は光太郎(みつたろう)
ロダンの「考える人」の写真を見て感銘を受け、彫刻家 を志すようになる。
明治30年（1897）東京美術学校予科入学。
明治31年（1898）本科彫刻科に進学。
明治35年（1902）東京美術学校 彫刻科卒業。研究科に残る。
明治37年（1904）白馬会曙町研究所に通い素描等を学ぶ。
この頃、与謝野鉄幹の新詩社に入り、「明星」に短歌を発表しはじめる。
明治39年（1906）岩村透の勧めで 彫刻 を学ぶため留学 アカデミー・オブ・デザインに入る。
アート・スチューデンツ・リーグの夜学生として彫刻を学ぶ。
欧米の近代美術から多くを学び、オーギュスト・ロダンと親交を深め、彫刻家としての精神を学ぶ。
荻原守衛・柳敬助を知る。
明治42年（1909）帰国。
帰国後は、「パンの会」に加わり、「スバル」に詩を発表し、近代美術の紹介に努めた。
ロダンに学んだヨーロッパの近代造形思考と、幼少時から身につけた伝統的造形手法との相克を鋭く追求した。
明治43年（1910）荻原守衛の死に遭い強い衝撃を受ける。
大正元年（1912）駒込アトリエ完成。岸田劉生らと結成した第一回ヒュウザン会展に油絵を出品。
大正 3 年（1914）詩集「道程」出版する。
長沼智恵子と結婚。
昭和 4 年 （1929）妻・智恵子の実家が破産し、妻・智恵子の精神が不安定となる。
昭和13年（1938）智恵子と死別。
昭和16年（1941）詩集「智恵子抄」出版する。
昭和17年（1942）「造型美論」を発表した。
面・量塊・動勢・肉づけを四因子とする、本格的な彫刻理論の結実である。
寡作ながら「手」「裸婦坐像」「黒田清輝像」など密度のある佳作も生んだ。
また、「鯰」「桃」「蝉」などの 木彫り にも新生面を開いている。
智恵子と死別後は、太平洋戦争を聖戦として戦争協力詩・愛国詩を書く。
戦後、その責任意識から岩手県花巻郊外の太田村に独居自炊の生活を送り、自己裁断を行った。
昭和22年（1947）帝国芸術院 会員に推されるが辞退。
昭和25年（1950）詩集『典型』出版する。
第2回読売文学賞を受賞する。
昭和28年（1953）日本芸術院 第二部会員に推されたが辞退。
山居生活を終え、十和田湖畔に建つ記念碑の塑像「裸婦像」を制作。
昭和31年（1956）結核のため逝去。73才没。

代表作は『手』、『黒田清輝像』など。
彫刻 だけでなく『道程』『智恵子抄』などの詩集も有名。

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