近藤悠三 略歴

柳染附金彩瓢瓶

明治35年近藤正平、千鶴の三男として京都府に生まれる。本名は近藤雄三。
近藤家は代々清水寺の寺侍として知られ、祖父の近藤正慎は勤皇の志士。
陶芸家 の近藤豊（1932～1983）は長男、陶芸家の近藤濶（1936～2012）は次男、
陶芸家で美術家の近藤高弘（1958～）は孫、俳優の近藤正臣は親戚。
京都市陶磁器試験場、付属伝習場の 轆轤 科に入所し、河井寛次郎・濱田庄司と出会い技術を磨いた。
19歳の時、濱田氏の紹介で、奈良県生駒郡の富本憲吉の助手になる。
近藤悠三の作品は、工房助手となったこの富本憲吉に強い影響を受けている。
「陶器 以外のことが身につけば身につくほど、君の陶器が立派になる」という座右の銘を授かり、生涯、これを守り続けたと言われている。
つまり陶器に執着しすぎず見識を広めれば、それが独自の作陶に後々いきてくるという事。
色絵 磁器の人間国宝である富本は、独自の模様を作るため既成の模様を重視せず、モチーフを探しに日々へとへとになるまで野山を歩き回ったと言われている。
さらに、浅野忠が設立した関西美術院でデッサンと西洋絵画を学びながら、オリジナリティ追求した。
さらに河合卯之助からは 陶芸 を、津田青楓から書と図案を学び、作陶技術と画才が融合した、独自の近藤 染付 が生まれた。
1924年（大正13年）には京都の関西美術院洋画研究所にて洋画やデッサンを学び、自宅にて作陶に励む。
昭和初期より 帝展・文展 等に、アザミ・葡萄・柘榴などの模様を主題に、染付ほか多様な 技法 による作品を発表した。
模様にこだわることなく、アザミ、葡萄、石榴などの植物を丁寧に スケッチ し、そのデザインを元に藍色の染付により豪快な筆致で描いたものが多い。
近藤悠三の独自の作風で、器とデザインとの見事な調和を楽しむことができると言える。
1928年（昭和3年）26歳で九回帝国美術院 展覧会 に「呉須薊文かきとり花瓶」を出品し初入選。
以後13回連続入選し、実力作家としての地位を築き上げた。
新文展では「柘榴土焼花瓶」で特選に選ばれる。
戦後は、呉須を使った染付に熱心に取り組み、この技法の研究を行う。
素朴で力強ささえ感じる作風で、独自の染付の世界観をもち、多くの愛好家に支持されるようになった。
その後、日展で 審査員 を任されたり富本憲吉主宰の新匠会会員になったりと、陶芸の発展に努めた。
さらに日本伝統工芸展鑑査員、常任理事、陶芸部部長、支部幹事長などの重役も務める。
1953年（昭和28年）51歳で京都市立美術大学（現・京都市立芸術大学）の 陶磁器 科助教授に就任。
5年後には教授となり後任の育成を行いつつ自らの作品を発表し続けた。
1955年結成の日本工芸会に所属後は、専ら染付磁器による制作に集中した。
近藤悠三の染付は、古来の中国明・清風の様式化された意匠・技法を排除し、自らが写生から得た柘榴・梅花・山水などをモチーフとした雄渾な絵画的筆致に、釉裏紅 彩を併用する場合も含めて、呉須の濃淡の諧調による独自の境地を示すものであった。
晩年、60歳頃からの、染付に加彩される金彩や 赤絵 による作品は、力強くかつ華麗で、呉須 を主調とするその作風に、さらに特色を加えたものと言える。
1965年（昭和40年）には63歳で同学長になり、7代清水六兵衛・藤平伸・八木一夫というそうそうたるメンバーを大学に迎えた。
彼らは清水五条界隈のみならず、陶芸界で知らないものはいないほど著名な実力作家たちで、当然のことながら近藤氏の人脈も一流であることを物語っている。
国内だけでなく海外でも名前を知られるようになったのは、1957年（昭和32年）ミラノ・トリエンナーレ展に「染付 花瓶」を出品し銀賞を受賞したのがきっかけ。
日本から5人が選抜された現代世界陶芸展では、その中の一人に選ばれ、オークランド美術館やオックスフォード大学に作品が収められている。
昭和45年紫綬褒章を受章、昭和52年には染付技法の重要 無形文化財 保持者、人間国宝として認定を受けた。
昭和60年、胃がんのため83歳で死去。
代表的な作品には、富士 染付 赤字金彩壷があり、背景が金色で、赤や白などの鮮やかな色を上手く使い、富士山の大きさをより印象的にしている。

近藤悠三の主な出来事や作品の年表

明治35年（1902）2月8日、京都市清水寺下に父正平、母千鶴の三男として生まれる。
本名は雄三。
大正 3年（1914）京都市東山区安井小学校卒業。
京都市立 陶磁器 試験場附属伝修所ロクロ科に入所する。
当時、河井寛次郎と濱田庄司がおり、窯 業科学などを学ぶ。
大正 6年（1917）伝修所 轆轤 科卒業。
京都市立陶磁器試験場に助手として勤務する。
大正10年（1921）19歳、3年間、河井・濱田の薦めで富本憲吉の助手として大和安堵村に行く。作陶方針が決まる。
大正13年（1924）富本氏のもとを辞して京都ヘ帰り独立する。
関西美術院洋画研究所に通院し、でデッサンや 洋画 を学ぶ。
京都市清水新道石段下の自宅に仕事場を作り作陶を始める。
大正15年（1926）中島光子と結婚。
昭和 2年（1927）25歳、大山巌の勧めで、東京銀座「美術園」にて始めての 個展 を開催する。
昭和 3年（1928）第9回帝展に初入選。以後13回連続入選し、作家としての地歩を固める。
帝展・文展 で入選を重ね、活躍する。
彼の本領はあくまで磁器に発揮されており、染付を本領とし、
柘榴、葡萄、梅、松、山水、詩文などに題材を求め、大胆豪放な 画境 を開いた。
また、晩年には、赤絵や金彩も円熟の境を示し、濃麗な大装飾画面を展開し、
赤絵金彩壷や金彩赤地皿・呉須染付などの連作を完成させた。
昭和14年（1939）第3回文展特選を 受賞。
昭和25年（1950）第6回日展において 審査員 となる。
昭和26年（1951）新匠会会員となる。
昭和27年（1952）伊勢神宮に「柘榴染付花瓶」を奉納。
昭和28年（1953）皇太子殿下ご渡英の際に「柘榴染付大花瓶」一対のご用命を受け、在英大使館に備え付けられる。
京都市立美術大学陶磁器科助教授に就任。
昭和30年（1955）結成された日本工芸会所属後は専ら 染付 磁器の制作に集中した。
柘榴、葡萄、薊、筍、梅、山水等が雄渾な絵画的筆致で表現され、
水墨画を思い起こさせる 呉須 の濃淡が何ともいえない色彩のバランスを作り出している。
昭和31年（1956）第3回 日本伝統工芸 展において「山水染付壺」が最高賞である日本伝統工芸会賞を受賞。
岐阜県多治見にて志野焼の研究、製作を開始。
ザクロや梅などをモチーフとして絵画的な表現する。
以降は染付の制作に専念する。
昭和32年（1957）ミラノ・トリエンナーレ展で銀賞を受賞。
昭和33年（1958）京都市立美術大学教授に就任。
昭和35年（1960）以降、呉須染付に併用して 赤絵 や金彩の技法を用い、更に独特の作風を確立した。
橿原神宮に「山染付大壷」を奉納。
昭和36年（1961）皇居御座所の御料品として「柘榴染付壷」を制作。
「柘榴 花瓶」がオークランド美術館に買い上げられた。
昭和40年（1965）京都市立美術大学学長に就任。
この頃、新皇居の御料品として「赤地金彩花瓶一対」を制作する。
昭和45年（1970）紫綬褒章受章。
昭和46年（1971）京都芸術大学学長を退任して同大学名誉教授に推選される。
昭和48年（1973）勲三等 瑞宝章受章。
京都市 文化功労者 章受章。
昭和49年（1974）京都府美術工芸功労者章受章。
昭和50年（1975）「梅染付大皿」が京都国立近代美術館に買い上げ。
昭和52年（1977）染付技法の重要 無形文化財 保持者（人間国宝）に認定される。
昭和55年（1980）紺綬褒章受章。帝展や 新文展 等に染付を始めとする多様な 技法 で作品を発表する。
昭和60年（1985）2月25日、83歳没。

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